あらすじ

辺境の学校に通う少年ヴェーラーは、美人でミステリアスな理科の専任講師メルク先生に惹かれ、理科準備室へ足を運んでいた。ある放課後、彼は先生から『悪魔のゲーム』と呼ばれる、赤・黒・青の3つの玉を動かしてゴールを目指すボードゲームを提示される。ルール自体が不明で、どう動かしても無限ループに陥る理不尽なパズルだったが、先生の「最初の一人に特別なご褒美をあげる」という言葉に背中を押され、ヴェーラーは実験ノートを手に検証を始める。 ある日、誰も触れていないはずの密室でパズルが勝手にゴール状態になる怪事件が発生する。先生の恩師の遺作だというそのパズルは、放置すると20%の確率で自然にゴールに達する、奇妙な「仕様」を持っていた。進路や将来への不安から逃げるようにパズルに没頭するヴェーラーは、夏休み中、ボードを落としそうになるという不格好なアクシデントを経験する。 その失敗をきっかけに、ヴェーラーは「ボードを傾けて重力を利用する」という三次元的な操作と、玉の動く速度のわずかなタイムラグに気づく。そして新学期、彼はボードを傾け、黒玉に息を吹きかけるという繊細なプロセスにより、100%の確率でゴールへ導く「再現性のある解法」を証明してみせた。 パズルは見事に解き明かされた。しかし、出張から戻ったメルク先生の左手薬指には、銀色の指輪が光っていた。ヴェーラーの初恋は静かに終わる。だが、先生は彼の卓越した観察眼と記録の才能を見抜き、一冊の専門書『プロセス化学総論』を手渡す。悪魔のゲームは、少年が本物の科学者としての道を歩み出す、ままならなくも美しい研究生活の始まりの扉だったのだ。

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カクヨム
カクヨム2026/06/01
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