あらすじ
高校生の柊と澪は、ある朝見知らぬ異世界の村「カルナ」で、同じ布団の中で目を覚ます。白髪の紳士ヴェルナーによって現世から「写し」として召喚された二人は、偽装夫婦として生活することを強要される。最初は反発し合い部屋に境界線を引く二人だったが、共に生活し、戦う中で、互いの思考を先読みするほどの異常な同期(シンクロ)を見せ始め、背中を預け合う本物の相棒へと変わっていく。
無愛想で不器用な柊と、他人を寄せつけない澪。最悪の出会いだったはずの二人は、都市を巡る事件に巻き込まれながら、少しずつ行動を共にするようになる。同じ布団で眠り、食事を分け合い、買い物をして、くだらないことで言い合う。
そんな小さな時間を積み重ねるうちに、孤独だった二人の距離は、まるで夫婦のように近づいていった。だが都市では、人々が突然暴徒化し、自我を失う異変が広がっていた。その裏で動いていたのは、“七塔”と呼ばれる巨大システム。
その黒幕は、人の思念を操り、感情そのものを書き換えようとする存在――“箱の男”だった。かつて家族を失った箱の男は、「感情があるから人は苦しむ」という絶望から、世界そのものを再構築しようとしていたのだ。柊と澪は、仲間たちと共に七塔停止作戦へ挑む。歌で人の心を繋ぐ少女・タウ。死者の想いが残る手帳を抱えたレム。
その手帳には、命を落とした青年レンの言葉が残されていた。誰かを守りたいという願い。
託された想い。失われてもなお残り続ける感情。レンの残した言葉は、傷つきながら進む仲間たちを繋ぎ、絶望しかけた彼らを何度も支えていく。世界を観測し続ける青年・カイ。
不器用な優しさを持つゼン。命を削りながら剣を振るうブラス。そして、青銀の光を宿した黒犬・クロ。それぞれが喪失を抱えながら、それでも“誰かと生きる理由”を選び取っていく。感情を「非効率なノイズ」として排除し、世界を完全管理しようとする「箱の男」や巨大な要塞の脅威が世界を飲み込む。二人は仲間たちと共に、システムの中枢である七つの塔を巡る過酷な戦いに身を投じる。
戦いの果てに、柊と澪は知る。世界を救うためには、自分たちの“共鳴”を、要塞の核へ送り込まなければならないことを。しかし、その代償は――この世界で過ごした記憶の喪失だった。共に戦った日々も。
交わした言葉も。
芽生えた想いさえも、すべて消えてしまう。それでも澪は言う。「帰ったら、また会いましょう」記憶が消えても。名前を忘れても。
また、同じ場所で出会えると信じて。世界崩壊を止める最後の戦いの中で、柊と澪は“誰かと生きること”を選び取っていく。これは、喪失の果てで“誰かを選ぶ”物語。揃わないまま、それでも一緒に進もうとした二人の物語。