あらすじ
蘇生が当たり前になる以前の世界③
[Abstract]
本稿の目的は、「時限式簡易蘇生術式」の使用によって一時的に蘇生した死者が術式の終了と共に死体へと還る際に発生する倫理的懸念、いわゆる「再殺問題」の分析である。
死者に事情聴取を行うという王都警邏隊の切り札「死霊捜査官」を実際に運用するには、「殺人ではないか」という当該の倫理的懸念の払拭が喫緊の課題である。
魔術哲学を専門とする女性研究員の私は、残りの任期に急き立てられ、気の進まない題材で公募論文の執筆に取り掛かる。
「意図と予見」「付随的被害」「消極的安楽死」。殺人ではない、と言い訳を並べ立てる仕事は、私の中絶のトラウマを疼かせる。
私の才能を見出してくれた。私に期待してくれている。無垢な勘違いと憧れは利用され、犯される。
いつの間にか私と教授は共犯関係になり、私は女を利用して、彼は権力を利用する。象牙の塔で女が生き残るよくある方法。
その結果腹に空いた穴を抱えて、流れ出る汚い血を見せつけて、私は歌う。
こちらの都合で生きることを許されなかった全ての存在を見送る歌を。
女の罪と痛みと悲しみを表現する歌を。
そして公正なフリをして女に責任を押し付ける世界に抗う歌を。
所詮は籠の鳥であろうとも。
[完結済]全6話