あらすじ
二十一世紀も四半世紀を少し過ぎた頃、日本で人口調整法案が可決された。
三十五歳を過ぎて子どもを二人以上養育していない個人は、高額な人口調整税、俗に罰金と呼ばれるものを払うか、自身の精液か卵子を国に提供することが義務付けられた。
国はそれらを元に、機械仕掛けの人工子宮を用いて人口を調整し、税収の安定化を図った。
そんな制度から生まれた子を『人口調整法に基づき生れてきた児童』、通称『調整児』と呼んだ。
これは、そんな人工子宮から生まれた、いや、生まれさせられた一人の調整児、橋広直樹のお話。
調整児育成施設で誕生した直樹は、施設内で最低限の義務教育を受けながら、きょうだい部屋と呼ばれるさまざまな年代の男児と共に共同生活を送ることになった。
そこでは自給自足を基本としながらも、教師や職員にかかる費用、自給自足ではまかなえない分は、『奨育金』として施設を出た後に調整児の借金として負わされる仕組みになっていた。
調整児は生まれてすぐに首に銀の首輪をはめられ、それにより存在位置などをモニタリングされていた。
直樹には会いたい人がいた。
それはきょうだい部屋に移る前にいたしまい部屋で一緒だった音夢(ねむ)と言う女の子だった。しかし音夢とはきょうだい部屋に移ってからは会えなくなってしまった。
ほのかな恋心を寄せる音夢に再び会うことと、自分の生物学的父と母に会うことが直樹の願いになっていった。
月日が経ち、直樹は施設を出され、外の世界で生きていくこととなった。
施設から男子調整児に斡旋される仕事はどれも危険があるか低賃金のものばかりだったが、調整児にはそういったことが分からず、言われるままに職を決め、そこで提示されたところに住むことになった。
直樹はごみ収集作業員として働くことになっていた。
外の世界は調整児には厳しい環境だった。
元男子調整児は知識のないまま危険があるか低賃金の職に就き、一般の人と同じ税金に加え、奨育金の返済もしなくてはならなかった。
直樹はひょんなことから、ソープランドで働く音夢と再会することができた。
二人はすぐに打ち解け、付き合うようになった。ただ音夢は一度嫁いだ先から不妊を理由に離婚させられ、理不尽な借金を負わされており、ソープで働き続けるしかない生活だった。
直樹の楽しみは、月に一、二度、同じきょうだい部屋だった元調整児達との飲み会に参加することだった。
参加メンバーはほぼ決まっていて、ごみ収集作業員の敦夫、ホストの紅(こう)志(し)、医大生で紅志にお金を借りている路(る)太(た)、陸上自衛隊の高等工科学校に通う全(ぜん)希(き)、それに直樹の計五人だ。
五人は金銭的に余裕がない生活をしながらも励ましあいながら懸命に生きていた。
ところが――
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