あらすじ
数千の軍勢を一睨みで沈黙させた覇王ヴェルグ。世界を恐怖で従えたその王は、最も信じた者の刃に倒れ――目を覚ますと、深夜の見知らぬ街に、無一文の若者「黒木玄」として転生していた。
体に宿る力は本物だ。だが、その力は腹を満たさず、行く先も教えてくれない。飢えと屈辱のなか玄が転がり込んだのは、二十四時間眠らない小さな城――コンビニエンスストアだった。彼を恐れず、ただ握り飯を差し出した店長。釣り銭の数え方を教える女子大生。母国を遠く離れた留学生。王が一度も触れたことのなかった「対等」と「居場所」が、そこにあった。
発注を戦と捉えれば誰より冴え、万引き犯を眼力で凍りつかせ、王はやがて街でいちばん頼られる店員になっていく。だがその街に、忘れたはずの相手が現れる。かつて自分を討った勇者もまた、転生していた。今や巨大流通企業の頂点に立つ彼は、こう嘯く。「人間は弱く、愚かで、非効率だ。だから私が、すべてを管理して"完成"させてやる」と。人の手を、人の温もりを、すべて無人のシステムへ置き換えようとする旧き宿敵。
守るべきものを持たなかった王が、初めて、守りたいものを見つけてしまった。帰還の力を取り戻すか、この小さな灯りを守るか。覇王ヴェルグの最後の戦は、玉座ではなく、深夜のレジの内側から始まる。