あらすじ
東京の総合病院で内科医として働く白河あかね(30歳)は、完璧主義で患者に正直な言葉を返しすぎる"口が悪い女医"として有名だった。「お世辞を言う暇があるなら、正しい診断を一つ増やす」が口癖の彼女は、ある嵐の夜、病院の階段から転落し、目を覚ますと幕末の江戸にいた。
文久二年(1862年)、コレラが荒れ狂う江戸の下町。人は神仏に祈り、医者は手をこまねくしかない時代。あかねは異国の医師と偽って男装し、必死に現代医学の知識で人々を救おうとする——が、口から飛び出す言葉はどこまでも現代語で、幕末の常識とは真逆のことしか言えない。
そんな彼女の前に現れたのは、謎めいた薬問屋の若旦那・霧島朔(きりしまさく)。薬の毒性を嗅ぎ分け、患者の嘘を見抜く鋭い目を持つ男は、あかねが「常識外れの異人医」であることを最初から見抜いていた。
医療の知識で謎を解き、薬で命を繋ぎ、互いに秘密を抱えながら、二人はやがて——この時代そのものを揺るがす疫病の真実に近づいていく。
かたくりの花は、芽吹くまでに七年かかる。
それでも、春になれば必ず咲く。
帰れない時代で、帰りたくない理由を見つけてしまった女の話。