あらすじ

夕暮れの窓辺に そっと腰を下ろす 若かった日々は 遠い川の流れのように過ぎて 泣いた日も 笑った日も 今では同じように 柔らかな光をまとっている 庭の椿が咲き 湯のみから立つ湯気が揺れ 誰かの笑い声が 廊下の向こうから聞こえてくる ここは豪邸ではない 思い出の詰まった故郷でもない けれど 寒い夜に暖かく 具合の悪い朝に誰かがいて 「おはようございます」 と声をかけてくれる場所 それだけで 人はずいぶん救われる 終の棲家とは 人生の終着駅ではなく 最後にたどり着く 安心の港なのかもしれない 窓の向こうでは 今年も桜が咲く 来年も見られるだろうか その次はどうだろう そんなことを思いながら 今日という一日を 大切に抱きしめる 急がなくていい 競わなくていい もう十分に歩いてきたのだから 夕焼けに染まる空を見上げ 私は静かに微笑む ありがとう ここまで生きてこられたことに ありがとう 今日も誰かと同じ空を見られることに そして いつか訪れる夜を恐れず 穏やかな眠りにつけるよう この小さな部屋で 私は今日も 春を待っている。

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小説を読もう2026/06/01
  • 現在の作品注意欠陥多動性障害ADHDの終の棲家