あらすじ
『しばらく旅行に行ってくるね。ごめんね!』
夏休みの初日、ただ一人の理解者であった親友から送られてきたその一文を読んで、私は強烈な吐き気を覚えた。
ウチらだけのルールで生きるあの子が、あんな痛い(!)を使うわけがないのだ。
だが、アイツのSNSアカウントは毎日決まった時間に旅行の「充実した写真」を更新し続け、事情を知らない同級生たちはそれを微笑ましいと『いいね』を押してもてはやしていく。
消された位置情報。ちょっと一昔前の古臭い写真加工。5時間遅れでアップロードされる「BeReal」。
三十五度のクーラーが壊れた自室で。限界女子高生の私は自作PCのウルトラワイドモニターに送られてきた親友の自撮りを拡大し――極小の「インクの網点」を見つけて絶望する。
母親は娘のスマホを取り上げ、お面を構えて嬉々とおままごとを繰り返している。
ならば、親友の「肉体」は今、外界の光が届かない『オフライン』のどこに置き去りにされているのか?
魔法のようなITハックじゃない。これは等身大の泥臭い執念だけで狂った大人から親友を引きずり出す、三十五度の孤独で息の詰まる戦い。