あらすじ

32歳、離婚。元夫の借金だけ残して失踪。 シングルマザーの桐原真琴が持っているのは、 異常なほどの記憶力と、人を「ただ見る」だけの目だった。 弁当工場をクビになった帰り道、 潰れかけの老舗弁当屋の前で老人が倒れる。 真琴はとっさに厨房へ入り、常連客の弁当を作った。 夜勤明けの看護師には、匂いが残らない弁当を。 血圧の高い老人には、減塩でも味が濃く感じる弁当を。 冬の現場仕事の男たちには、冷めても旨い弁当を。 深夜のスナックのママには、胃に優しい雑炊を。 大型チェーンの300円弁当に客を奪われながら、 元夫が親権を盾に戻ってきながら、 娘が「うちは貧乏だから」と呟く夜も、 真琴は朝4時にシャッターを上げ続ける。 泣かない。愚痴を言わない。 弁当の中に、言葉にならないものを込めるだけ。 これは、ゆっくり諦めていた街が、 一人の女の「ただ見る目」によって、 少しずつ動き始める物語。

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エブリスタ
エブリスタ2026/05/31
  • 現在の作品夜明け前の弁当屋