あらすじ
亡くなった父は、大手術の最中に「天井から自分を見ていた」と語っていた。
幼い頃から霊の存在を当然のように信じてきた男は、梅雨時のマンション階段で異様な気配に遭遇する。
巨大な蛾。
曇った窓の向こうからの視線。
そして、暗闇から現れた“指差す手”。
怪談を書き続けながらも、本物の霊を見たことはない。
だが、その夜だけは違った。
老い、病、父との記憶。
人生の終わりが、静かにこちらを向き始める。
これは怪異なのか。
それとも、死を意識し始めた人間の感覚なのか。
湿った空気の中に滲む、人生怪談。