あらすじ
遠い昔。
ある男は、愛する女性と慎ましく暮らしていた。
しかし、その幸福は突然終わりを迎える。
彼女は死んだ。
男は後を追おうとした。
だが、死ねなかった。
どれほど傷つこうと、どれほど時が流れようと、男は死ぬことができなかった。
理由も分からぬまま。
気が付けば数百年が過ぎ、やがて千年近い歳月が流れた。
国は滅び、歴史は塗り替えられ、人々は彼を忘れていく。
かつて愛した女性の名前を知る者も、もうどこにもいない。
それでも男だけは、千年前の後悔を忘れられなかった。
そんなある日。
男は奇妙な噂を耳にする。
――過去へ辿り着く方法が存在する。
誰も見たことはない。
方法も分からない。
どこから広まったのかすら誰も知らない。
だが、その噂だけは十年ほど前から世界中で囁かれていた。
千年を生きる男ですら聞いたことのない、新しい伝説。
それは偶然なのか。
それとも誰かが意図的に流したものなのか。
僅かな可能性に縋るように、男は旅へ出る。
失った過去を取り戻すために。
もう一度だけ、愛する人に会うために。