あらすじ

王都を震え上がらせる男がいた。 冷酷。 非情。 政敵を容赦なく切り捨てることから、 人は彼を 「ハゲタカ」 と呼んだ。 そんな男が恋をした。 相手は絶世の美女でも、 高貴な王女でもない。 土を愛する令嬢だった。 宝石より種。 ドレスより長靴。 舞踏会より畑。 彼女の瞳が輝くのは、 最高級の堆肥を見た時だった。 「欲しいものはあるか」 そう尋ねれば、 彼女は嬉しそうに答える。 「完熟馬糞を十袋ほど!」 冷徹宰相は沈黙した。 人生で初めて、 返事に困った。 それでも彼は、 珍しい種を探し、 新しい農具を集め、 最高品質の肥料を届ける。 彼女が笑うから。 芽吹いた双葉を見つめる横顔が、 どんな宝石より美しかったから。 恋とは不思議なものだ。 月や薔薇ではなく、 堆肥やミミズで語られることもある。 春になれば種を蒔き、 夏に育ち、 秋に実る。 ふたりの想いも、 畑の作物のように少しずつ育っていく。 今日も彼は尋ねる。 「欲しいものは?」 彼女は満面の笑みで答える。 「最高品質の堆肥です!」 青空の下、 その笑顔を見ながら、 ハゲタカ宰相は思う。 ――まあ、それでもいい。 世界中の堆肥を集めてでも、 守りたい笑顔があるのだから。

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小説を読もう2026/06/01
  • 現在の作品『ハゲタカ宰相閣下は、堆肥をねだる令嬢に勝てない』 ――冷徹宰相、人生最大の誤算は「農業オタク」でした。