あらすじ
「セシリア、君との婚約は白紙に戻す」
王立学院の中庭で、聖女候補セシリアは婚約者から一方的に婚約解消を告げられた。
正式な破棄には両家の承認が必要だ。
けれど、人前でそう告げられた時点で、噂は正式な書類より早く走り出す。
彼が選んだのは、治癒魔法に優れたセシリアではなく、王都社交界と宮廷魔導院に縁を持つ華やかな令嬢だった。
そんな彼女を支えたのは、下級騎士見習いのカイル。
ハンカチを貸した。
昼食を食べていない彼女に、硬いパンを半分渡した。
彼女の治癒魔法を「すごい」と言った。
それだけだった。
なのに翌日から、カイルの机にはセシリアの手作り弁当が置かれるようになる。
しかもその弁当は、疲労回復、筋肉痛軽減、軽傷治癒の魔法付き。
セシリアは真面目な顔で言う。
「ただのお礼です」
だが、王立学院の生徒たちはそう見なかった。
聖女候補が毎日弁当を届ける。
昼休みに隣に座る。
体調を確認する。
怪我をしたら誰よりも先に治しに来る。
それはもう、婚約者の距離だった。
婚約破棄された聖女候補と、ただ弁当を食べていただけの下級騎士見習い。
治癒弁当から始まる、王立学院外堀ラブコメ。