あらすじ
世界は無限の虚空に浮かぶ円盤(フラットアース)。外縁から這い出る魔獣から人類を守るため、人々は異界の武具を呼び出す「武装召喚」に命を懸ける。
弱肉強食を掲げる覇帝国バルムント――その最高峰たる名門公爵家の長男として生まれたアルトリウスは、幼少期から苛烈な英才教育を受け、その才から「至高の剣」と謳われた。誰もが彼が「神話級」の武具を従え、未来の聖天十座になることを疑わなかった。
しかし、16歳の召喚の儀。彼の手の中に現れたのは、逸話も異能も持たない最底辺の武具――「一般級(コモン)」だった。
「我が家に無能はいらぬ」
昨日までの称賛はすべて裏返り、アルトリウスは一瞬にして家を追われ、帝国の最前線である「外縁」へと放逐される。待っていたのは、英雄級や怪異級を操るエリートたちからの容赦なき嘲りと、魔獣が肉を裂く絶望の戦場だった。
どれだけ足掻こうとも、一般級の武具では届かない壁。
戦いの果て、精神を浄化する余力すら奪われたアルトリウスは、自らの歩みを超える「狂気」に心を明け渡し、人類の敵である【魔人】へと成り果てる。
「世界が俺を無能と捨て、狂気へ突き落とした。ならば、その狂気ですべてを貪り尽くしてやる」
理を失い、ただ破壊衝動に突き動かされるはずの魔人化。しかしアルトリウスの凍てついた執念は、濁流のような狂気すらも自らの力として「調和」させ始める。
共鳴率と狂気度、その双方が極限の90%を超えたとき――世界に現存しないはずの超越者【天魔】が、外縁の闇の底で産声を上げる。
これは、すべてを失った男が、狂気の鎖を引き千切り、フラットアースの偽りの平穏を叩き潰す、凄絶なる逆襲の記録。