あらすじ

「料理しか能がない」――そう切り捨てられ、賄い係の湊灯真は、S級ダンジョンの最深層に置き去りにされた。戦う力も、帰る手段もない。残ったのは、鍋ひとつ。 死を覚悟した最後の一杯を、灯真は行き倒れの腹ペコ少女に分け与える。涙して完食し、服を掴んで離さない少女――だが彼女こそ、飢えれば世界を喰らい、満たされれば無害になる、神話級の厄災《飢餓》だった。古書に通じた灯真だけが、その正体に気づいた。ハズレスキル【供物】は戦闘力ゼロ。けれど世界でただ一つ、この少女を満たし鎮められる力だった。 討たれるか、兵器にされるか。灯真は少女を「ヒナ」と名付け、正体を隠して餌付けする道を選ぶ。ところが――彼の賄い飯は食べた探索者を回復させ、そばにいるヒナは魔物すら大人しくさせる。「隠したいのに、バズる」。掲示板も配信も、“謎の料理人”の噂で持ちきりだ。 やがて人混みの中で、ヒナの飢餓が暴走しかける。ダンジョン庁は彼女を「危険個体」と見て内偵を始め、灯真を捨てたクラン・銀星のリーダー鏑木は、逆恨みで二人の住処を晒す。群衆に囲まれ、最後の一膳すら砕け散った夜――灯真は悟る。ヒナを壊していたのは、自分の恐怖だったと。 もう、隠れない。覚悟を決めた灯真は、衆目の只中、暴走しかけたヒナを、たった一杯の握り飯で鎮めてみせる。全世界の生配信が映したのは、子供を脅した男と、災害を飯で鎮めた料理人――どちらが英雄かは、考えるまでもない。銀星は公開処刑のごとく失墜し、灯真は「救国の料理人」として、世界でただ一人“厄災”を御せる“鎖”だと認められる。料理しかできなかった男が、料理で世界を満たす男になった。 ――そしてヒナが漏らした記憶の断片と、遠い空に口を開けた“もう一つの穿ち”。厄災は、一体だけではなかった。

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カクヨム
カクヨム2026/05/31
  • 現在の作品深層に置いていかれた料理人の俺。拾った少女が世界を喰らう『厄災』だった〜正体を隠して餌付けしてるのに、賄いがバズって大騒ぎになった件~