あらすじ
大学病院で救命救急医として働く東條琴には、
誰にも言えない趣味があった。
化学だ。
休日には薬理学論文を読み漁り、
自宅では簡単な化学実験まで行うほどの筋金入りである。
ある夜、当直明けの帰宅途中で事故に遭った琴が目を覚ますと、
そこは幕末の江戸だった。
女性が医術を扱うことを許されない時代。
身分も後ろ盾も持たない琴は、
偶然救った武家の姫君によって
「毒見役兼薬師」として大奥へ迎えられる。
しかし、その華やかな世界の裏側では、
御年寄の突然死。
将軍家へ献上される菓子への毒物混入。
夜ごと幽霊を見るという側室。
原因不明の湿疹が広がる長局。
数々の怪事件が起きていた。
周囲が呪いと恐れる中、
琴だけは冷静に呟く。
「症状は嘘をつかない」
医学と化学。
そして論理。
その三つを武器に、
女医は大奥最大の闇へ挑む。