あらすじ
誰からも英雄とは思われていなかった少年、エリアン・ヴォス。
剣は弱く、足は遅く、地図は逆さに持ち、肝心なところで手が震える。
冒険者としては頼りなく、仲間たちからも「悪い子ではないが、戦力ではない」と見られていた。
けれどエリアンには、ひとつだけ奇妙な力があった。
彼には、ダイスの音が聞こえる。
それは未来を正確に見る力ではない。
罠が動き出す前、選択が取り返しのつかないものになる前、戦場の流れが変わる前――運命が転がり始める、その小さな音だけが聞こえるのだ。
酒場の片隅で笑われた少年は、逆さの地図を抱え、風の違和感に怯え、七歩後ろから仲間の背を見つめる。
これは、前に立てない少年が、それでも誰かを救う物語。
そして最後に、運命のダイスが静かになった時、彼が初めて自分の足で一歩を選ぶまでの、五つの歌の物語。