あらすじ
ダンジョンは、町を潤す。
素材が売れ、宿が埋まり、酒場が賑わい、短期契約の若者たちは日銭を求めて穴へ潜る。
「戦闘なし」
「未経験可」
「三日で高収入」
そう書かれた札を信じて潜った子どもたちは、戻らなければこう言われる。
本人が選んだ。
危険は説明した。
契約書に署名している。
ノラ・ヴェイルは、灰鷹ギルドにも神殿にも正式には属さない外部の救助屋だ。
できることは多くない。
一度に連れて帰れるのは、せいぜい一人。
白魔法でも失った血は戻せない。
助けられない者には、水と灯りと、最後の言葉を書く紙を残す。
それでもノラは、死んだ若者の声を「自己責任」の一言で片づける大人たちを許せなかった。
そして彼女は知る。
ダンジョンには核がある。
核を奪えば、迷宮は閉じる。
ただし、それは町の仕事場を潰し、利権を止め、法に背く行為でもある。
救助では足りない。
けれど、閉じるだけで救えるわけでもない。
若者を食う迷宮を、ノラは一つずつ閉じていく。
これは、救えなかった名前を背負った少女が、世界の仕組みに逆らう物語。