あらすじ

頂から泥沼へと落ちるのに、どれほどの時間がかかると思う?セドリックにとっては、仕組まれた一回の放逐だけで十分だった。ロサ辺境伯の『私生児』として、すべてを剥ぎ取られたセドリック。義兄の白々しい笑顔、一族の冷徹な嘲笑。そして懐に残された錆びついたボロ剣、磨耗した十枚の銀貨、そして首を吊るための麻縄一本――それが、彼の受け取った『遺産』のすべてだった。この残酷な世界において、知識は火を起こせず、高貴な『姓』は腹を満たしてはくれない。激しい豪雨に追われ、逃げ込んだ廃墟。そこで彼は衝動的に、孤狼のように獰猛な目をした、謎の少女を救い出してしまう。ほんの一時の行きずりのはずだった。彼は『宿代』のつもりで銀貨を一枚投げつけ、彼女と決別した。だが、運命は彼に、最高に残酷で皮肉な平手打ちを食らわせる――。翌朝、戦争の影が忍び寄る『鉄杉の街』へと足を踏み入れたセドリックを待ち受けていたのは、建てられたばかりの絞刑台だった。そして、踏み板の上で首に縄をかけられていた死刑囚こそが、昨夜彼を激昂させたあの少女だったのだ。罪名は、手配書に記された『窃盗』。そして『盗品』とされたのは、昨夜、彼が自ら彼女へと投げつけた、あの銀貨一枚。「その銀貨は彼女が盗んだんじゃない。俺が買ったんだよ。……たまの夜遊びさ、珍しくもないだろ?」人を救うため。すべてを失った落魄の坊ちゃんは、震える足で絞刑台へと登り、最低最悪な色餓鬼の言い訳と、刃こぼれした『咆哮する獅子のボロ剣』を手に、死刑囚を強引に奪い去った。ただの、寝覚めの悪さを解消するための帳尻合わせのはずだった。しかし、『ジェシー』と名乗る野生の小狐は、にやにやと笑いながら彼の旅路に無理やり居座る。「お坊ちゃん。私、借金を踏み倒すのは得意だけど、命の貸し借りは別なのよね。一応、恩は返すタイプだから。安心して、お坊ちゃんのチェリーは私がちゃーんと大~事に守ってあげる」放逐の身であることを暴く査証状が、今まさにロサ領から迫りつつある。底辺の生存法則を熟知し、口を開けば狂言を吐く野生の少女が、彼の人生へと強引に介入してくる。自分を吊るはずだった麻縄をぎゅっと握り締めながら、セドリックは生まれて初めて思った。――この縄は、自分で首を吊るより、ジェシーの首を絞めるために使った方がマシなんじゃないか、と。

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小説を読もう2026/05/31
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