あらすじ
感情補正システムが社会基盤となった近未来。怒りは和らげられ、衝動は抑えられ、人々の言葉は穏やかになった。犯罪は減り、暴力は減り、社会は静かになった。誰もがそれを、進歩と呼んでいた。
警視庁の刑事、神谷誠司は一人の若い女性の死に呼ばれる。危険度ゼロ。健康異常なし。生活安定。完璧な記録が「問題なし」を示す中、彼女だけが死んでいた。
似た死が、静かに積み重なっていた。
全員、最後まで誰にも異常が見えていなかった。全員、普通だったと言われた。全員、何も残していなかった。
犯人はいない。事件でもない。なのに神谷は、止まれなかった。