あらすじ
月島凛、十七歳。日ノ丘高校二年生。表の顔は「地味でおとなしい普通の女子高生」。裏の顔は、感情代行サービスの現場スタッフ。
孫娘の代わりに誕生日を祝う。娘の代わりに老母の隣に座る。友達がいない人の「友達」として卒業式に笑う——凛は三年間、百を超える他人の人生を演じ続けてきた。「本当の自分」を守るために、先に「誰か」になってしまう女の子。
ある日、届いた依頼書を見て、凛は三度読み直した。
依頼人・篠原美月、十七歳。衆議院議員の娘。社交不安症。そして、勤務場所は「日ノ丘高校」——凛が毎日通う、この学校の中。
学校の中で演じるな、という鉄則を破り、凛は美月の「友達」を演じ始める。でも美月は、偽物の友達だとわかった上で、それでもまっすぐ凛を見てくる。
そして隣のクラスの架橋悠一は、ずっと前から——凛が演じていることを、知っていたように見える。
「月島さんは、本当は誰なんですか」
誰かにそう問われるのが、この世界で一番怖いことだと、凛はずっと思っていた。