あらすじ
町工場の配送係として働いていた景司は、学歴も器用さもない不器用な男だった。だが、頼まれた仕事を断らず、雪の日も深夜も黙々と働き続けたことで、少しずつ周囲の信頼を得ていく。やがて取引先との接待で大相撲五月場所へ招かれ、テレビ中継の「向こう正面」の席に座ることになった景司。全国の友人や故郷の家族から「テレビで見たぞ」と連絡が相次ぎ、自分でも気づかなかった“積み重ねてきた人生”の重みを知ることになる。さらに千秋楽には、両親を升席へ招待。無口だった父から初めて「いい顔になったな」と認められ、景司は働き続けてきた日々が確かに誰かへ届いていたことを知る。派手な成功ではなく、「あいつなら大丈夫」と思われる人生の尊さを描いた、人情味あふれる現代版青春小説。