あらすじ
私、坂井千里。四十一歳、既婚、研究開発の最前線に立つ主任研究員。
勤務時間外、夜の実験室で、二十七歳の部下「祖父江くん」が私に迫った。ようやく私は、慕ってくれている彼の想いが上司・部下の関係でなく、情愛だと知る。
電波暗室という密室の実験施設。そこで始まったのは、私の輪郭の崩壊。目の前の男を求めて震える。気がつけば、私は彼に手を差し伸べていた。
越えてはいけない立場、捨てきれない家庭、守ってきた日常。若い熱とまっすぐな想いに抗おうとするほど崩れていく。
理性と欲望の境界で、私は何を選び、何を手放さなければならないのか。妻であり、母であり、女だった私の、戻れない恋の記録。