あらすじ

あらすじ 西暦2081年。太平洋緩衝区と名付けられ、国家から遺棄されたN市。 かつて「効率」の名のもとに数万人を切り捨てた老行政官・和久井は、77歳になった今、右足の古傷の疼きだけを道標に、崩壊を待つ泥の地にとどまり続けていた。 隣り合うのは、脳内デバイスを首筋に刺し、肉体の痛みを忘れた孫のハルト。 「おじいちゃん、そのパーツ、バグだからデリートした方がいいよ」 冷たい虚構の光の中に生きる新世代との、交わることのない決定的な断絶。 退去宣告まで、あと120時間。 インフラの息の根が止められようとする中、和久井は43年分の脂と汗、そして死者たちの血を吸い込んだ「磁気通帳」を懐に抱き、地下深きシステムの心臓部へと足を引きずり這い進む。 それは、すべてを無に還すための、そして彼自身の罪と歴史の質量をこの地に留めるための、最期の看取りだった。 ■ お勧めの方。 • 便利さの裏で、自らの肉体の感覚や「生きている実感」が薄れつつあると感じる方 • 言葉だけで終わらない、湿った土や赤錆の匂いが立ち込めるような、硬質な世界観に浸りたい方 • システムによる管理社会の果てに、人間が守るべき「最後の尊厳」のあり方を求めたい方 本作は「摩耗の閾値」の続編となっています。今作のブラッシュアップ版はkindleにて将来的に展開されますが、それの先行公開という形になります。 かなり硬質な作品ですが、お目通しいただけると幸いです。

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カクヨム
カクヨム2026/05/30
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