あらすじ

「三年間、毎日作ったのに。一度も『美味しい』って言ってくれなかったね」——婚約者の透真は、そう言い残して親友の彩乃と消えた。テーブルに残されたのは、まだ湯気を立てるビーフシチュー。私の「好物」だと彼が決めた料理。捨てられない。食べられない。一週間、腐っていくシチューを眺めることしかできなかった私に、隣室の無愛想な料理人・蒼介が差し出したのは、塩むすびひとつ。「……食え」ぶっきらぼうで、不器用で、でもそのおにぎりは泣きたくなるほど温かかった。「美味しい」も「ありがとう」も言えない私。幼い頃から「手のかからないいい子」でいることしか知らなかった私。そんな私に、蒼介は何も求めない。ただ隣で、不格好な優しさを差し出してくれる。これは、言葉にできなかった想いを少しずつ解きほぐしていく、再生と恋の物語。完璧じゃなくていい。不器用でもいい。大切なのは、「美味しい」と伝えたいと思える人と、同じ食卓を囲むこと——。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/05/30
  • 現在の作品「ねえ、これが最後だから」三年間毎晩料理を作ってくれた婚約者が親友と消えた日、残されたシチューを捨てられなかった私に隣の無愛想な料理人が差し出したおにぎりが温かすぎた件