あらすじ
ブラック企業の劣悪な環境で働く一人の社畜、楠木弥生の日課は、仕事終わりに飲む酒だった。
通りすがりの商店で買った酒を片手に彷徨ううちに辿り着いたのは夜の公園。
夜は日常と離れた雰囲気を醸し出す。
ベンチに座り、酒を飲んでいると、どこか不思議な雰囲気を漂わせた少女が現れる。
面白いものを見せてあげる──そんな彼女の言葉に誘われ辿り着いたのは、アパートの一室に広がる夜桜だった。
楠木は思わず見惚れる。時期に似つかぬ立派な大桜。空に浮かぶは青く輝く巨大な球体。
少女の名前は春。彼女は眼にした物の全てを知ることができるという。
そんな春に頼まれたのはAEを蒐集する手伝いだった。
春と行動を共にするうちに楠木に芽生えたのは、異常への好奇心だった。
無限に続く鏡の回廊。
伽藍堂の異世界オフィス。
帝都と戦う街の便利屋。
時を止める時計。
快刀乱麻、全てを断ち切る幽明の刀。
──それらは徐々に日常を蝕む非日常だった。
淡く光り、夜に踊る魚群。
無機質に形成された歪な生命体。
静かに水面の揺れるタイルばりの世界。
手に持つものを発射する中年男性。
摩訶不思議なドリンクを排出する自動販売機。
──いつしか、その異常は災いとなりその身を滅ぼすだろう。
背後に迫る、捨てられた人形。
電脳世界を支配する、完全無欠のウイルス。
生命をたぎらせ闊歩する、不老の人間。
異次元からの電波を受信する、携帯端末。
絵柄の多いトランプ。
不気味に笑う、巨人の影。
──しかしそこからはもう後戻りできない、不思議に満ち溢れた世界だ。
銃口の欠けた自動小銃。
広く流通する不揃いな地雷。その裏には巨大な組織があった。
確率を超越したコイン。
ひとりでに熱を帯びる鍋。
亡霊の営む冷えた喫茶店。
ね?面白いでしょう──
少女があどけなく笑う声が聞こえる。
百物語はまだ序章。少女と男は異常を蒐め奔走する。
そうして明かされる衝撃的な事実の数々。
楠木に眠る能力。数多の異常と共に分岐を繰り返す異世界。帝都に葬られた世界の真実。
ここではない、遥か彼方の異世界で紡がれる非日常的なストーリーが今ここに──