あらすじ
「記録は嘘をつかない」。それだけを信じて、エリスは今日も羽根ペンを走らせる。
王都の社交界では"地味なモブ令嬢"と呼ばれる男爵家の次女・エリスには、ひとつだけ人に言えない得意技があった。領地の生産・人口・天候をひとりで観察し、記録し、整理する——その積み重ねが、やがて国を動かすとは、本人も夢にも思っていなかった。
転機は突然やってくる。第三王子・オルフェウスに試されるように赴任を命じられ、エリスはたったひとりで東の果ての廃れた領地へ向かう。
そこで待っていたのは飢えた民と腐敗した旧体制。さらに信頼していた侍女の裏切り、身を挺して守ってくれた騎士の死、王宮から届く圧力の嵐——それでもエリスは観察し、記録し、静かに反撃する。
証拠は積み上がる。誰も気にしなかった数行の記録が、やがて国一番の不正を暴く剣になる。
この物語は、目立たない令嬢が手と頭だけで王国を変える、静かで確かな逆転劇。果たしてエリスを陥れようとした真の黒幕とは誰か——その答えは、最後の記録の中に眠っている。