あらすじ
後宮の華やかさから外れた一角に、倭国との通訳を司る「通倭司」がある。
倭国から差し出された人質の少女・小文はそこに勤めているが、その微妙な立場故、任せられるのは墨磨りのような雑事のみ。とはいえ、彼女自身はそのような日々を決して嫌ってはいなかった。
ある日、通倭司に一通の公書が届く。
倭国から皇帝宛てに送られてきたその書には「送終」――弔いを意味する、不穏な言葉が書かれていた。
そのまま伝えれば皇帝の怒りを招き、戦の火種になりかねない。
しかし言葉を和らげれば、それは一国の意思を訳者が書き換えることになる。
倭国との戦になれば、人質である小文の命の保証はない。そんな中、小文はその言葉に違和感を覚えていた。それは誤訳か、あるいは意図的に仕組まれた罠か。
誤訳一つで国一つが滅びかねない、陰謀が渦巻く情勢の中、この件をきっかけとして、小文は後宮を揺るがす大事件へと巻き込まれていく。
何も持たぬ少女は、言葉一つで己の運命に抗う。後宮を舞台にした、言葉が運命を左右する翻訳ミステリー。