あらすじ
四月。
中学三年生になった佐倉友樹は、新しい教室で滝夏美と隣の席になる。
まだスマホも携帯電話も普及していない時代。
誰かと連絡を取るには、家の電話を使うしかなかった。
美術部に所属する友樹は、白い紙に最初の線を引くことが少し苦手な少年だった。
体調にも不安を抱えていて、無理をしないようにと言われながらも、自分の弱さをどう受け止めればいいのか分からずにいる。
そんな友樹の隣で、夏美はノートの端に不思議なウサギのようなキャラクターを描いていた。
名前は、ぴょん吉。
かわいくて、少し変で、どこか人の気持ちを代弁するようなその落書きは、友樹と夏美の間に、少しずつ特別な言葉を作っていく。
夏美の親友である如月沙耶も加わり、三人の距離はゆっくりと近づいていく。
まっすぐで少し厳しい沙耶。
不思議な感性で友樹の心を拾う夏美。
そして、うまく言葉にできない友樹。
進路、受験、体調、面接練習。
中学三年生の一年は、思っていたよりも早く進んでいく。
怖いまま進むこと。
休むことを負けにしないこと。
用事がなくても、誰かの声を聞きたくなること。
ノートの端に描かれた小さな線は、やがて友樹たちの春へとつながっていく。
これは、白いノートの端から始まる、少し不器用な青春と恋の物語。