あらすじ

「貴様との婚約は破棄する!」

会場の視線が私に集中した瞬間、私は静かに微笑んだ。

「殿下、お尋ねしてもよろしいですか。
 貴方が今夜のために国庫から流用なさった
 八万四千二百三十七ゴルド——その端数の銅貨三枚は、
 どちらに消えたのでしょう?」

会場が、静まり返った。

——だって殿下。
私、王宮会計監査局の見習いなんです。

数字は、嘘をつきません。
嘘をつくのは、いつだって、数字を書く人間の方です。

***

王宮会計監査局の第三等見習官であるエルナ・ヴァルトハイムは、公金横領の疑いがある第二王子フィリップを内偵するため、地味な令嬢を装い婚約者として監視を続けていた。
しかし、算術を忌み嫌う愚かな王子は、自らの罪にも気づかず、卒業舞踏会の場でエルナを糾弾。見目麗しい男爵令嬢との「真実の愛」を語り、身勝手な婚約破棄を突きつける。

「私が泣くと思って、わざわざこの場をお選びになったのですか?」

国庫を食いつぶす不正な支出の数々を、三年間鍛え上げた完璧な記憶力と算盤で、一銅貨の狂いもなく暴き立てるエルナ。
無慈悲な数字の羅列と証拠を前に、王子と男爵令嬢、そして欲深い共犯者たちは次々と崩れ落ちていく。

そして、完璧な断罪劇を見届けたエルナの直属の上司——王位継承順位第一位のレオンハルト殿下が、ついに歩み出てきて……?

※数字と規律を愛する冷静沈着なヒロインが、愚かな王子を容赦なく追い詰める爽快な「ざまぁ」短編(前6話)です。

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アルファポリス
アルファポリス2026/05/30
  • 現在の作品『泣かないんですか?』婚約破棄された会計監査見習いの私は、王子の脱税額をそろばんで弾きます