あらすじ
教室の隅で、誰にも気づかれないまま生きてきた女子高生・佐倉澪(さくらみお)、十六歳。 ある放課後、彼女はトラックに轢かれかけた子供を庇って、誰にも知られないまま死んだ──はずだった。
目覚めた先は、絢爛なシャンデリアが照らす、舞踏会の中央。 婚約者であるアレクシス王子が、聖女ミレーヌを抱き寄せて、彼女に向かって叫んでいた。
「アリシア・フォン・グランツハイム! 貴様との婚約は破棄する!」
(……ああ、なんだ。こっちの世界でも同じか)
澪は、転生した自分が乙女ゲーム『蒼穹のセラフィア』の悪役令嬢で、この瞬間は彼女が断罪されて処刑される"運命の場面"だと、静かに理解した。 だが、十六年間「いない子」として扱われ続けた彼女に、もう失うものなどなかった。
「──結構ですわ。こちらからお願いいたしますわ、その婚約破棄」
凍りつく会場。震える王子。青ざめる聖女。 教室で誰にも見えなかった少女は、二度目の人生で、自分から選ぶことを覚える。
そんな彼女を、たった一人。 舞踏会の柱の影から、敵国──ヴァルツ帝国の冷酷な若き皇帝シリル・フォン・ヴァルツェンが、瞳を眇めて見つめていた。
「……あの女、面白い」
これは、誰にも見えなかった少女が、世界中の視線を集めながら、たった一人の"自分を見てくれる人"を見つけるまでの物語。 透明だった私が、二度目の十六歳で、初めて世界に色をつける。