あらすじ
大人バレエを始めた四十八歳の主婦・黒澤真理は、子どもの頃も大して上手くなれなかった“落ちこぼれバレリーナ”。
夢を込めて「舞う」という字を与えた娘・舞香は、高校生になった途端にバレエをやめてしまい、真理は諦めきれない思いだけを胸に大人のバレエ教室へと通い始める。
その頃、三十年前に二十一歳で事故に遭い、いまも肉体は眠ったままの天才バレリーナは、「誰かの本当の夢を叶えれば、この世に残れる」と告げられる。
バレリーナになりたいと言う舞香に憑依しようとして、その言葉が本心ではないとすぐに見抜いた彼女は、渋々、母である真理の方に取り憑くことになる。
努力が足りないまま大人になった落ちこぼれ主婦と、血のにじむレッスンを重ねてきた天才。
何もかも噛み合わない二人は、かつて舞台の上と客席でしか交わらなかった三十年前の記憶を挟みながら、自分が諦め、娘がやめた夢を、もう一度追いかけていく。
最初は母を冷たく見つめていた娘舞香も、やがてその姿に心を動かされていく。
落ちこぼれ主婦と、眠り続ける天才の意識、そしてバレエをやめた娘。三人で一人のバレリーナを目指す、光と影の大人バレエ物語。