あらすじ
終電で眠ってしまった会社員・神崎悠真が目を覚ましたのは、路線図に存在しない無人駅だった。
駅名標は真っ白。スマホは圏外。時計は深夜二時十三分で止まっている。ホームへ降ろされた乗客は、ちょうど百人。
やがて古びたスピーカーから、不気味なアナウンスが流れる。
「次の電車は、午前五時ちょうどに参ります」「ただし、百名様全員でのご乗車は、ご遠慮ください」「電車が重くなります」
意味が分からないまま時間だけが過ぎていく中、乗客が一人、また一人と消え始める。残されるのは、赤いランドセル、革靴、水色の傘――持ち主を失った忘れ物だけ。
しかも、消えた者の記憶は、残った人々から少しずつ失われていく。
ただ一人、同じ異変を覚えていた女性・三浦奈緒とともに、悠真は消えた人々の記録を残そうとする。しかし午前五時が近づくにつれ、乗客たちは気づき始める。
次の電車に乗るためには、誰かをホームへ残さなければならないのではないか――。
深夜の無人駅で始まる、忘れられた死者と、忘れることのできない生者の物語。