あらすじ
「弁明があるなら、聞こう」
婚約者である王太子の、その言葉は——濁っていた。
嘘をつく時にだけ、言葉が濁って視える。生まれつき、ヴィオラにはそれが視えた。
だから分かる。横領の罪も、揃ったという証拠も、全部、嘘。
断罪している王太子の言葉が、一つ残らず濁っていることも。
泣くと思われていた。けれど、嘘の前で泣く理由などない。
ヴィオラは、誰の言葉も信じたことがなかった。
世界はいつも、薄く濁っている。褒め言葉も、慰めも、愛の言葉さえ。
ただ一人を除いて。
何を言っても、言葉が澄んだままの人がいた。地味で、不愛想で、お世辞ひとつ言わない——記録官の、ライナー。
すべての嘘が視える令嬢が、生まれて初めて"本当のこと"に出会う、婚約破棄の物語。