あらすじ
高校2年生の倉橋凪(くらはし なぎ)は、クラスに「魔女」という渾名で呼ばれていた。
理由は単純だ。去年の春、彼女は学校一のカリスマ女子・桐島澪の嘘をたった一言で見破り、公衆の面前でさらけ出した。それ以来、澪の取り巻きたちに「あの子は人を呪う」「笑顔が不気味」と噂を流され、クラス中から距離を置かれている。
だが本当のことを言えば——凪には、人の「本音」が視える力があった。言葉の裏に滲む感情の色が、まるで煙のように見える。誰かが嘘をつくと、その煙が黒く濁る。澪の嘘を見破ったのも、呪いなんかじゃなく、ただそれだけのことだった。
孤立した日々の中で凪が選んだのは、「観察者」として生きることだった。誰とも深く関わらず、ただ静かに本音の色を眺めながら1年を過ごす——そのはずだったのに。
新学期初日、転校してきた新条玲(しんじょう れい)が凪の隣の席に座った瞬間、彼の周りだけ煙の色が「透明」だった。ただの一度も、嘘をついたことがないような——そんな透明な人間が、世の中に存在するはずがない。
凪の365日が、動き始めた。