あらすじ
とある会社の会議室。彼は一人、長机の前に座り、机の上で両手を固く組んでいた。天井の白い蛍光灯がかすかにジーと音を立てている。その音だけが妙に耳につき、部屋の静けさをいっそう際立たせていた。
どこか落ち着かず、彼は身じろぎして椅子を軋ませたり、咳払いをしていた。と、そこへ――。
「……あ、課長! お疲れ様です!」
「いい、そのままで。ですよね?」
「ええ」
ドアが開き、課長ともう一人の男が入ってきた。顔には深い皺が刻まれ、鋭い眼差しと落ち着いた所作が、ただならぬ風格を漂わせている。
彼はわずかに浮かせた腰を静かに落とし、唾を飲み込んだ。
呼び出された理由は聞かされていない。『大事な話があるので会議室で待つように』とだけ伝えられていたのだ。
「えー、こちら、このたび本社からうちへ配属になった――」
「いえ、紹介は結構」
「あ、はい。へへっ、これはどうも……」
課長はしどろもどろになり、照れ笑いを浮かべた。それから声を潜め、ぼそぼそと簡単な説明を付け加えた。
それによると、どうやら本社から来た新任部長らしい。
確かに、ただ立っているだけで空気が張りつめるような存在感がある。おそらく相当なやり手だ。社内改革のために送り込まれてきた人物に違いない。ならば、ここで呼ばれた自分にも、何か重大な役割が与えられるだろう。
そう思い、彼は口元に笑みを浮かべた。そして、やはりここは立ってきちんと挨拶すべきだろうと考え、再び腰を浮かせた。
そのときだった。部長が口を開いた。