あらすじ
宇宙を覆い尽くさんとする善意が、地球まで押し寄せた。
ブラザー・カヂルグミが救済施設の鍵を開けると、地球人全員の心に扉が用意された。
その扉をくぐれば、誰もがリッチになれた。
金の話だけではない。
生と死の境界はあやふやになり、病気や老いは遠いものになった。
あふれ出て余りある愛は、ただ一人の孤独も許さなくなった。
人々は一斉に駆け出し、扉をくぐって、楽園のプールに飛び込んだ。
肉を食い、好きな人と抱き合い、理想的な自己実現におぼれた。
しかしなぜか、そんな悠久のバカンスの手前で立ち止まる人たちがいた。
その扉の前で、準備運動をはじめる者もいた。
カヂルグミは首を傾げながら、その人たちに近づき、声をかける。
「何か、お手伝いできることはありますか?」
これは、猫が隠した星で行われた、人類と、不幸の最後の戸締まりの話である。