あらすじ

浪人生の僕は、壊れたメガネを直すため、駅前の古めかしい眼鏡屋に入った。本当は、レンズ代込み五千円の量販店で安く済ませるつもりだった。けれど、なんとなく足を止めたその店で、僕は一万八千円の古いフレームを買うことになる。 それから数日後。ファーストフード店の窓際で、百円のコーヒーを飲みながら参考書を開いていた僕は、街を歩くひとりの女性の頭の上に、不思議な文字が浮かんでいるのを見る。 ――今日死のう。 見えてしまった以上、見なかったことにはできなかった。けれど僕は、誰かの人生を救えるような立派な人間ではない。大学にも受かっていない。自分の未来すら決まっていない。ただの浪人生だ。 それでも僕は店を飛び出し、彼女に声をかける。 「あの、よくないと思います」 人の心が読めるわけではない。人を救う言葉を持っているわけでもない。ただ、見えてしまったものを見なかったことにはできなかった。 これは、壊れたメガネをかけた浪人生が、百円のコーヒーと冷蔵庫のビール一本ぶんだけ、誰かの今日に触れる、少し不思議な短編。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2026/05/16
  • 現在の作品僕のメガネは似合わない