あらすじ
結婚式前夜。
婚約者との未来を目前に控えながら、由美子は窓の外に浮かぶ月を見つめ、かつて愛した“彼”の歌を思い出していた。
上京したばかりの孤独な春の日。
駅前で出会ったのは、夢だけを信じてギターを弾き続ける青年だった。
後に人気バンド「Neverlanders」のボーカルとして成功を掴む彼は、まだ何者でもない頃、路上ライブで歌っていた。
夢に真っ直ぐな彼に惹かれ、由美子は恋に落ちる。
彼の夢を支えたい――
その想いだけで始まった同棲生活。
しかし現実は甘くなかった。
生活費、家事、仕事、将来への不安。
夢へ向かって走り続ける彼と、現実に押し潰されそうな彼女。
二人は少しずつ、同じ未来を見られなくなっていく。
「夢だけじゃ、生きていけない」
そう思いながらも、
由美子は最後まで彼を嫌いになれなかった。
別れから数年後。
彼はスターダムを駆け上がり、
由美子は“理想的な結婚相手”と出会う。
優しく、誠実で、安定した未来を与えてくれる婚約者。
誰もが羨む幸せのはずだった。
それなのに――
心の奥には、
ずっと埋まらない空白が残り続けていた。
夢を追うこと。
現実を生きること。
誰かを愛すること。
そして、“大人になる”ということ。
これは、
夢に置いていかれた二人が、
もう一度“現実”と向き合いながら、
それでも愛を選ぼうとする物語。
『Wendyの夢名残』
あの春の日、
空を飛べると信じていた、
すべての大人たちへ。