あらすじ
二十七歳。
フリーター。
売れないバンドマン。
地方都市の片隅で、ライブハウスだけを居場所に生きるギタリスト・美波凪。
ボーカルのアオ、ベースのミツ、ドラマーの柴崎と共に、バンド「灰色逃避行」を続けている。
客のいないライブ。
終わらないアルバイト。
親からの「いつまでやるの?」という電話。
少しずつ現実に飲まれていく日々。
もう若くない。
才能だけで走れる年齢も過ぎた。
それでも彼らは、ギターを捨てられなかった。
東京の深夜フェスで出会った、謎めいたレーベル主宰・羽鳥真昼。
「あなたたち、ちゃんと終わってる人たちですよね」
その言葉をきっかけに、灰色逃避行は小さなツアーへ出る。
長野。新潟。名もないライブハウス。
社会に馴染めなかった人々。
“普通”になれなかった観客たち。
これは、夢を叶える物語ではない。
大人になることに少し失敗した人間たちが、
それでも音楽だけは諦めきれなかった夜の物語。
誰にも救われないはずだった音が、
誰かの「もう少しだけ生きてみよう」に変わるまでを描く、
静かで不器用な青春逃避行小説。