あらすじ
保健委員2年目、天音真。祖父が町医者、母が看護師。家庭環境で身に付いた応急処置の知識だけが、異常に詳しい。
二年D組のこの俺の保健室には、誰も来ない——はずだった。
転校初日に風邪で倒れた白瀬ゆき。練習後の頭痛で乱入してくる朝比奈怜。腹痛で静かに座り込む黒崎詩月。三人とも別クラスの美少女で、それぞれ別の症状。
俺は毎日、丁寧に応急処置を続けた。微熱には冷却シートと汗の拭き取り。頭痛にはノンカフェインのお茶と暗い場所。腹痛には温かい飲み物。症状は確かに観察できた。本物の震え、本物の体温。だから疑わなかった。
だが、症状は徐々にエスカレートしていく。週6回の来訪、二人同時、三人同時。黒崎が「もう仮病、やめます」と呟いた時も、俺は「体調が良くなったんですね」と笑顔で返した。鈍感の極致だった。
ある日、担任の南雲先生に呼び出された俺は、こう聞かれる。
「あの子たち、何の病気か知ってる?」
そして放課後、三人が同時に保健室に来て、頭を下げた。
「私たち、全員、仮病だったんです」
転校の孤独、部活の重圧、家庭の問題——三人がそれぞれ抱えていた本当の理由を、俺は何一つ見ていなかった。応急処置で症状だけ消して、気持ちは置き去りにしていた。
「責任、取ります」
俺は三人に告げる。応急処置じゃ足りない。長期処置で。保健室の外でも会って、本当の話を聞かせてほしい——。
これが、保健室の常連美少女3人と俺の、本当の関係の始まり。