あらすじ
二年連続新人賞受賞。月刊青年誌『アビス』連載中。
ダークファンタジー漫画『アッシュ・スローン』作者——嶋崎新、享年二十二歳。
死因:竜の解剖学を修正しながら過労死。
目が覚めたら、ファンタジー王国の背景キャラ「トビー」として転生していた。
しかも、この世界はどこかのガキが数学の授業中にノートで書いた二次創作の中だった。
「キラキラはどこですか?光はどこ? 頭痛くなったので2点です」
——俺の代表作に、そのレビューをつけた張本人が、今まさにこの世界を書いている。
問題は山積みだ。
主人公の髪が鳩の羽ばたきで色変わりする。
経済崩壊した王国で農民が夕食に石ころを分け合っている。
騎士の馬が三歩に一回、石畳にめり込む。
そして俺が手直しするたびに、世界はその修正の代償を払わせてくる。
ルールはシンプルだ。
創り出すことはできない。あるものを編集するだけ。
そして作者が書き続ける限り、俺は存在できる。
俺の命は、あの中学生の更新スケジュールにかかっている。
完璧を求めて死んだ男が、完璧には程遠い世界を守るために戦う。
赤ペン、一本。
それが俺の全武装だ。