あらすじ
「神隠しの入り江」と呼ばれる寂れた浜辺。そこには時折、溺死体が流れ着く。桐生澪は七年間、誰に言うでもなく毎朝この場所に通い続けていた。──贖罪のために。あの夏の夜、自分が見殺しにした初恋の人を想って。ところがある朝、波打ち際に横たわる「それ」は、死んだはずの彼だった。汐見蒼真。七年前と変わらない藍色の髪、海を閉じ込めたような瞳。冷たい体で目を開けた彼は、穏やかに微笑んでこう言った。「久しぶり、澪」──そして問う。「なんで、お前は俺を助けなかった?」望まぬ婚約者に囚われ、過去の罪に縛られた澪の前に現れた、生と死の狭間を漂う存在。彼は何度もこの入り江に流れ着き、彼女を見ていたという。罪と愛が絡み合う、ひと夏の嘘の行方。あの日、本当は何があったのか。そして彼女が抱え続けた秘密とは。潮騒に洗われる真実が、二人の運命を静かに動かしていく──。