あらすじ
伯爵令嬢リディアは、王宮会計院で記録照合係として働いていた。
王家支出、王宮行事費、騎士団補給費。
それぞれの支出記録を照らし合わせ、不備があれば規則に従って報告する。
地味で目立たない仕事だが、王宮の会計を支える大切な役目だった。
しかし婚約者である財務副官エドガーは、彼女の仕事を「帳簿を写すだけ」と軽んじる。
さらに彼は、新しく取り入った男爵令嬢を後任に据え、リディアとの婚約解消まで告げた。
リディアは怒鳴らず、責めず、ただ正式な辞令と手続きに従って配置換えを受け入れる。
そして引き継ぎの最後に、未処理だった照合不能項目を規則通り「照合不能報告書」としてまとめ、監査請求添付記録とともに王宮監査院へ提出した。
数日後、王宮行事費、騎士団補給費、王太子私費の混同が正式監査の対象となる。
彼女が去った部署では、誰も記録の意味を理解できず混乱が広がっていき――。
これは、不正を勝手に暴く物語ではない。
ただ一人の下級書記が、職務と規則を守り抜いたことで、正しい手続きが静かに動き出す物語。