あらすじ
「ふぅ…」
ある時、一人の女神が気まぐれに世界を覗き込んだ。
まだ幼い女神は、父が良くする仕草を真似てみたのだ。
「んー…」
そして、彼方より流れくる一つの星を目にする。
それは、か細い光を放ちながらチカチカと瞬き、星々の間を縫うようにして落ちてゆく。
「うん…?」
興味を引かれた女神は、つと指を走らせ景色を切り替える…
切り替わった景色に映り込んだ物は、星ではなく人だった。
「えーと、おや?」
転生者…いや、肉体を持っている所を見ると転移者だろう。
ごくまれに、そういった者が流れてくる事を女神は知識として知っていた。
「フムフム…」
その者は傷付き、疲れ果てているように見える…
何か嫌な事でもあったのだろうか?
肉体だけでなく、魂までもが弱っているようだ。
「ホウホウ…」
しかし、そんな彼に女神はある予感を覚えていた。
“箱庭遊び”…それは限られた数の神々しか経験したことのない、間接的な世界への調律。
それを自分もしてみたい、と以前から女神は思っていたのだ。
「う~ん」
だがルールにより、大地に住む者達を相手にそれをする事は出来ない。
基本的に、神々は不干渉を旨としている。立場上、女神もそれに従わねばならなかった。
「もしや、これは…」
しかし、今回のような場合は話が変わってくる。
異界の存在である転移者…その存在が知れ渡ると、大地に住む者達の間で予期せぬ意識の変革が起きる。
「ピーンときました!」
地上で起きた意識の瞬きは、少なからずこの世界の在りように影響を与えるだろう。
その為、転移者には監視が必要となるのだ。
ルールでは、最初に見付けた者に優先権がある…これは、チャンスだった。
「グイグイ、グイッと!」
女神はさっと手を振り彼を招き寄せると、彼の記憶の一部にプロテクトを掛ける。
転移した者は元の世界に帰る事は出来ない。
「ちょちょいのちょいっ、です!」
彼は転移した時点で、多くの物を失っているのだ。
その喪失に耐えられず、自ら命を絶った転移者の話を女神は他の神々から聞いた事がある。
これは神々に比べ、遥かに脆弱である彼の精神を守る為のものであった。
「ではではっ!」
神秘の世界イルージア。強き力を持つ神々が支配する世界。
女神はそこに根を下ろす大地へと、自身が所持する宝石を与えて彼を送り出す。
「いってらっしゃーいっ、です!」