あらすじ

夜の市役所で働く臨時職員・山瀬沙知は、受付カウンターに置かれた白い封筒を見つける。表に書かれていたのは「予感届」。中には「明日、母は私を忘れる予感がします」と一行だけ記されていた。 翌日、その言葉どおり、認知症の母に名前を忘れられた女性が窓口を訪れる。以来、夜の受付には「父がいなくなる予感がします」「あの人の名前を呼べる予感がします」といった、不思議な届出が届くようになる。 沙知は庁舎の奥に、存在しないはずの「未受理相談室」を見つける。そこに残された帳簿には、予感とは未来を知らせるものではなく、“まだ受理されていない感情が現実になる直前に発する通知”だと記されていた。 やがて沙知自身にも一通の予感届が届く。 「あなたは今日、あの人を許す予感がします」 その夜、市役所の前に現れたのは、十七歳のとき家族を捨てて出ていった父だった。沙知は父を許せない。けれど、父が差し出した謝罪の手紙を受け取った瞬間、庁舎の奥から古い受理印の音が響く。 許すことと、受け取ることは同じではない。 予感とは、未来を当てることではなく、心が先に知っていたことを、今日の自分が受け取りに行くことなのだ。

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エブリスタ2026/05/03
  • 現在の作品受理される予感