あらすじ
「人間なんかに、心を許すものか」
獣人連邦の猫族姫ナーシャは、和平のために人間王国に嫁いだ。冷たい石の城、名前も呼ばない王、獣を見る貴族たちの視線――。
迎えた夫は影の薄い第三王子ユリウス。庭師のように土に汚れた手をした、地味で口下手な男だった。第一印象は「変な人」
けれど月桂館の暖炉はいつも適温で、食卓には故郷の味があり、庭には連邦にしか咲かないはずの薬草が根を下ろしていた。
偶然だと思っていた。気づかないふりをした。
――気づいてしまえば、もう壁を作れなくなるから。
猫族の鼻が嘘を嗅ぎ分け、耳としっぽが感情を裏切る、半生の物語。