あらすじ
――わしら三河者は狭量。そのくせ殿のためなら犬のように従順だもんでな。
――だでよぉ、姫さんは、ちゃんと守れ。狭量でもいいら。いっこ守れるだけ、そいつァ立派な男よォ。
ときは現代。ところは三河地方、豊川山中のある農家。
意気軒昂なる三河武士の家柄である桑守葉蔵は、己のルーツなどいざしらず、ただただ古臭い己の名前に辟易していた。
彼は都会での生活に挫折、漫然と大学生活を送ることに無価値を見出し、帰郷していた。
二十二歳の夏、葉蔵は蔵の掃除を任されたときに己の先祖が桑守半兵衛葉蔵――すなわち、れっきとした武士であることを、眠っていた古刀を調べることで知る。
彼はそれを寄贈するか、それとも己のもとに置くかで悩むのだが――ある晩、夢の中に現れた先祖に言われる。
「はよう錆を落とせ、たァけ。はようせにゃあ怨霊が来らぁ」
口の悪い先祖に腹を立てながらも錆を落とし、日々を過ごすが――。
あるとき、彼のもとに奇妙な出来事が出来する。
妖怪――狐の姫の逃亡。そして、追手の怨霊。
彼はその日を境に、鬱屈とした日々が急加速するように変わっていくのを感じ、悩んだ末に選び取る。
「俺ァ、もう逃げねえぞ。姫さんよ、褒美はたんまりたのまァ!」
――妖狐の姫の手を取り、怨霊と、己の過去と戦う道を。