あらすじ

地方の宗教共同体「静止の会」。「苦しみの連鎖を断つことが慈悲である」という理念のもと、出生回避を推奨するその施設に、外部観察員の桐島は記録係として赴任する。 ケース番号0047。二十六歳。暴力歴あり。経済的自立の手段なし。妊娠十四週。 条件は揃っている。結論は出ている。記録するだけでいい。 しかし桐島は、付き添い室の女に出会う。判断を下さず、声もかけず、ただ対象者の傍らに座り、一定のリズムで指を動かし続ける女。その視線が何をしているのか——助けているのか、苦しめているのか——桐島には判断できない。 週を追うごとに、記録が変容していく。書いた覚えのない一文。主語を失った記述。三人、と数えた時、その場にいたのは二人だった。 これは記録の崩壊なのか。それとも、記録されなかったものが記録に侵入してきているのか。 「正しく産ませないための記録」が、存在そのものを否定しきれずに壊れていく。

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カクヨム
カクヨム2026/05/03
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