あらすじ
「わたしはもう、死んでいます。死体が動いているだけなのです」
かつて、大陸を震撼させた最強の魔導国家・シックザール王国。三十数年前の開戦とともに滅んだはずのその国の姫君、リーゼロッテは、凄惨な姿で帰還した。
敵国・獣王軍によって改造された殺戮兵器――識別番号21、通称〝刑罰の魔女《シュトラーフェ》〟として。
魔力源を奪われ、胸に大穴が空いた「生ける死体」となった彼女に残された時間は、わずか七日間。
自我を失ったはずの彼女が、死の間際に求めたのは「破壊」でも「復讐」でもなく、ただ一つ。記憶の深淵に焼き付いて離れない、誰かとの「大切な約束」の正体を知ることだった。
人類軍の要請により、その鑑定に呼び出されたのは、町外れで隠居していた老鍛冶屋・ゲオルグ。
白髪としわに覆われた彼は、かつてリーゼロッテの騎士であり、そして――彼女と未来を誓い合った婚約者だった。
「化け物」と蔑まれ、火刑を待つ少女と、
彼女を「妻」として見送ることを誓った老騎士。
一人は泣き崩れ、一人はその涙の理由を問う。
噛み合わない対話の中で、最後に明かされた「約束」の正体とは。
止まったままの死体と、老いさらばえた元近衛騎士。
その再会は、世界で一番静かな火刑で終わる。